9.17.2019

無題46


晩御飯のジュノぺーゼソースに使うハーブを収穫するためにドア開けて、外に出た。

しゃがんでスイートバジルを摘んでいると、となりに蝉が、ひっくり返るでもなく静かに座っている。
生きているのか、死んでいるのかもわからない。
蝉と私の左足かかとの隔たりは、10cmもない。
なんとなく生きてそうだし、突いて、バタバタされるのも嫌だからな。そっとしておこう。
静かな蝉を傍らに、綺麗なハサミで、収穫も兼ねた切り戻しを淡々とこなす。

その夜は、無事に新鮮な自家製バジルとレモンの風味が香るジュノぺーゼパスタに成功した。

翌日の朝は、温帯低気圧の強い雨が降ったので、昼過ぎのクラスまで、部屋の中で過ごした。
天気も上がって、青空が見え出したのは、13時過ぎだった。
私は、午後のレッスンに向かうため、ドアを開けいつも通り外に出た。

足元に目をやると、昨日の晩と寸分狂わぬ場所に、セミが静かに留まっている。
こちらを向いるセミの丸い目は、私に何かを訴えるかけているかのようで、愛くるしく大変おとなしい。
夕飯の準備から今朝の強い雨、私がレッスンに向かう約18時間、同じ場所にいたセミ。
証拠に、写メールと動画を撮ってみよう。
大して面白くならないな。やはり死んでるのか。
また突いてみようか迷ったが、今はセミ爆弾に付き合う余裕もない。

夕方までレッスンをして、家に戻りドアを開けようとした。
足元を見ると、蝉が忽然と姿を消していた。

生きてたんだ。

鈴虫が鳴いた。


(完)